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10月 3日(水)
「マリア様がみてる 薔薇の花かんむり」を読んで、これまでの祐巳と瞳子を思う
マリア様がみてる最新巻「薔薇の花かんむり」を読了。ちょーよかったです!…っていっても実は先週の金曜日にはすでに読み終わっていたから、発売日を待ってようやくこの記事を書いたところ。
本の具体的な内容については触れませんのでご安心を。とはいっても、店頭で見かけた瞬間にネタバレしちゃうんだけどね。
いくらまんが王倶楽部さんが、
送られてきたあらすじがストレートに「あなたを探しに」後のネタバレだったのでup控えます
とか言っても無駄。だって、この表紙で、
しかもあろうことか、この帯で、
店頭にこうやって並んでるんだから、もうどうしようもないでしょ。
だけど前の巻まで読んでる人にとっては、もう祐巳と瞳子が姉妹になるというのは既知のことだし、今回はむしろそのことを再確認するための巻なのでいいのです。
そもそもこの程度のことがネタバレしたくらいでつまんなくなるような展開ではありません。
ところで、ここまで来るのにずいぶん時間がかかったとか、かなり待たされたとかの印象を持ってる人も多そう。そこで、どんくらい待たされたのかを振り返ってみました。
No. | タイトル | 内容 | およその時期(月) | 刊行日 | 刊行間隔(月) |
---|---|---|---|---|---|
1 | マリア様がみてる | 学園祭、祥子と姉妹に | 11 | 1998.4.24 | |
2 | 黄薔薇革命 | 黄薔薇姉妹のロザリオ返上騒動 | 11 | 1999.2.3 | 10 |
3 | いばらの森 | 白薔薇さまの過去 | 12 | 1999.4.27 | 3 |
4 | ロサ・カニーナ | 蟹名静さまと「なかきよ」 | 1 | 1999.12.1 | 7 |
5 | ウァレンティーヌスの贈り物(前編) | びっくりチョコレート | 2 | 2000.3.3 | 3 |
6 | ウァレンティーヌスの贈り物(後編) | 初デート | 2 | 2000.4.25 | 2 |
7 | いとしき歳月(前編) | 卒業シーズン 安木節 | 3 | 2001.2.2 | 9 |
8 | いとしき歳月(後編) | 卒業式、白薔薇姉妹回想 | 3 | 2001.4.3 | 2 |
9 | チェリーブロッサム | 瞳子初登場 志摩子の秘密 | 4 | 2001.7.27 | 4 |
10 | レイニーブルー | 紅薔薇破局の危機 志摩子、乃梨子を妹に | 6 | 2002.3.29 | 8 |
11 | パラソルをさして | 傷心の祐巳 姉妹鉄板の絆に | 6 | 2002.7.1 | 3 |
12 | 子羊たちの休暇 | 小笠原家の別荘 瞳子も予定を変更して参加 | 7 | 2002.12.25 | 6 |
13 | 真夏の一ページ | それぞれの夏休み | 8 | 2003.3.28 | 3 |
14 | 涼風さつさつ | 花寺の学園祭 可南子登場 | 9 | 2003.7.1 | 3 |
15 | レディ、GO! | 体育祭 | 10 | 2003.10.31 | 4 |
16 | バラエティギフト | 短編集 | 2003.12.25 | 2 | |
17 | チャオ ソレッラ! | 修学旅行 静さまと再会 | 11 | 2004.3.31 | 3 |
18 | プレミアムブック | アニメ版第一期ムック | 2004.7.27 | ||
19 | 特別でないただの一日 | 学園祭 可南子と和解 | 11 | 2004.10.1 | 6 |
20 | イン ライブラリー | 短編集 | 2004.12.25 | 3 | |
21 | 妹オーディション | 茶話会 可南子脱落 有馬菜々登場 | 11 | 2005.4.1 | 3 |
22 | 薔薇のミルフィーユ | 由乃と菜々デート 紅薔薇遊園地デート | 12 | 2005.7.1 | 3 |
23 | 未来の白地図 | 瞳子家出 瞳子に告白も祐巳玉砕 | 12 | 2005.12.22 | 6 |
24 | くもりガラスの向こう側 | 小笠原家での新年会 | 1 | 2006.3.31 | 3 |
25 | 仮面のアクトレス | 生徒会役員選挙に瞳子立候補 | 1 | 2006.6.30 | 3 |
26 | イラストコレクション | イラスト集 | 2006.7.28 | ||
27 | 大きな扉 小さな鍵 | 瞳子の秘密 | 1 | 2006.10.3 | 3 |
28 | クリスクロス | バレンタイン 宝探しイベントで瞳子告白 | 2 | 2006.12.22 | 3 |
29 | あなたを探しに | それぞれのデート 瞳子の秘密を知る祐巳 | 2 | 2007.3.30 | 3 |
30 | フレーム オブ マインド | 短編集 | 2007.6.28 | 3 | |
31 | 薔薇の花かんむり | 祐巳、瞳子を妹に | 2 | 2007.10.2 | 3 |
まず、見て分かるとおり、マリみては来春で 10 周年を迎えます。そんで、この 10 年の間に実は 15 ヶ月ほどしか進んでないのです。
最近はほぼ3ヶ月に1回と刊行ペースが上がってきてますが、その分小説内の時間が早く進むということはなくって、逆にゆっくりになってますね。
祐巳と瞳子が出会ったのは「チェリーブロッサム」。入学したての瞳子はちゃらちゃらしたお嬢様だったのだけど…。祥子さまを「祥子お姉さま」と呼んで、祐巳を不安にさせました。この頃、かなりむかつきましたねー。
「レイニーブルー」「パラソルをさして」ではさらに悪役に。祐巳視点の読者はかなりハラハラさせられましたですね。それでも、祐巳が強引に山百合会の手伝いを頼んだことから、ようやく接点が生まれて…。
「子羊たちの休暇」では、両親とのカナダ旅行をキャンセルしてまで別荘地にきてました。最初は嫉妬からの行動かと思われたけど、その後、柏木が「大きな扉 小さな鍵」のなかで、瞳子のこの行動は祐巳を心ないお嬢様連中から守るためだったのだ、と指摘してます。
しばらく姉妹問題はおあずけでしたが「未来の白地図」では、瞳子のプチ家出をきっかけに急接近。山百合会のクリスマス会にお呼ばれした瞳子は、祐巳からのロザリオ授受の申し出を冷たく断ってしまいます。
瞳子は祐巳を求めているのに、まだここでは祐巳の救いには手が届かないのです。それは頑なに、自分には幸せになる資格がないと思い、人を信じたいと思う気持ちを抑えている瞳子の闇なのでしょうか。
同情されたくないから、弱い自分を隠すように演技を続けている。でも隠した本心が時折現れて祐巳に近づいてしまうから、そうならないように壁を作っていく。祐巳と対立していく。
「大きな扉 小さな鍵」では、瞳子が始めて祐巳を見かけたときから漠然と恐怖を感じていたと語られていて。この人に引き付けられると自分が傷つくという恐怖でしょうか。でも、きっと裏を返せばこれは一目惚れというやつ。
祐巳のようになりたいというあこがれを否定するために。こうなりたいのになれないという悔しさを忘れるために距離を置こうとする。それをすべて受け入れようとする祐巳の大きさにひるんで、誤解して、結局拒絶してしまう。
そして、後悔の念に押しつぶされそうになる瞳子を救ったのが親友の乃梨子でした。「クリスクロス」では、「瞳子が好きになった祐巳さまなら、絶対頼って大丈夫だから」と乃梨子に激励され、「私を祐巳さまの妹にしていただけませんか」という宣言につながるのでした。
「あなたを探しに」では、瞳子が複雑な家庭環境のなかで自分の居場所を求めてもがいてきた過去が語られます。瞳子がすべてをさらけ出して、祐巳に委ねる決心をしたということ。祐巳はそれを全て受け入れると決めた、というよりすでに受け入れていることに気づいたという巻でした。
祐巳に対する形容も少しずつ変わってきています。「親しみやすく下級生にも人気がある」という最初の評価は、最近では「貫禄」とか「どっしり」というキーワードに。
祥子さまのもとで成長し、じたばたせず、人を信じて待つことができる祐巳。多少強引でも他人に踏み込んでいける祐巳。すべてを包み込む祐巳の救いに手をのばせるかどうか、が鍵でした。
乃梨子は持ち前の察しの良さで何となくそのことに気づいていて、瞳子が祐巳の妹になる手助けをするし、祥子さまも「まっすぐな祐巳にもたれかかってでも、自分の嫌な部分をなおしながら、成長していこうと決めた」と瞳子に告白し、祐巳から逃げるなと諭しています(「クリスクロス」)。
姉妹制度というものが、姉が妹を教え導くものであるというならば、祐巳と瞳子の関係は既にそれであったのだと、今、思います。
ロザリオの授受を行ったから姉妹になったのではない。いろいろな困難を乗り越え、一つ一つ壁を取り払って姉妹の絆を深めていった結果、ロザリオの授受があったのです。
だから、読者としてはそのあいだやきもきしたりもしたけれど、とりあえずくっついちゃってから姉妹の絆を深めるような展開よりも、より深い姉妹関係の描写になっていたんではないかと、振り返ってみて思うのです。
長く待たされたような気もするけど、そうじゃなくて、今思えば、すべてが必要な出来事だったのだと思うのです。
ともあれ、これで祐巳の妹問題は解決。この巻以降、いちゃいちゃする祐巳と瞳子がみられるのではないかと期待しています。なんかこの巻ではすでに長年連れ添った夫婦のような落ち着きっぷりだったりもするのですが…。
そしてシリーズは、いよいよ卒業シーズンへと入っていきます。緒雪先生の速筆っぷりに感謝しながら、追いかけていきたいと思います。
2007/10/ 3 15:04